2019年1~6月(半年間)での早期退職募集数は、昨年2018年1年間の人数のすでに2倍になった。半年ですでに昨年1年分の2倍と急増したわけだ。
詳細は以下の日経新聞の記事にまとめられているので、参照して頂きたい。
人手不足が続くにもかかわらず、大企業で定年前の退職を募る早期退職が増えている。2019年1~6月には上場企業の17社が合…
そこから拝借してきたのが、以下の主な早期退職募集企業である。
誰でも知っているような企業が並んでいる。なぜ、彼らはこれだけ大規模な早期退職という高年齢層のリストラを実行しなければならなかったのだろうか?
個別に見れば、事業利益の浮き沈みはあるだろうが、それでも日本経済はまだ大きく衰退しているわけでもないし、株価も高止まりしている。頼みの米国経済も順調である。少子化が原因とは言え、人手不足だ。AI,IoT,電気自動車、自動運転、新たなソフトサービス(uber, AirB, オヨホテル・・・)、宇宙開発など今後大きく発展するであろう未来も見えている。これらに対して、世界の企業やスタートアップが主導権争いにしのぎを削っている。これが、超マクロな世界経済感だろう。
なぜ日本の大企業が早期退職という高年齢層リストラを進めているのか
自分が早期退職した経験から言えば、主たる理由は単純なコストカットだ。
年功序列で基本給料が比較的高い高齢者層(45歳以上)を辞めさせれば、それだけ人件費が浮く。企業コストの人件費が占める割合は巨大だ。結果的には、大きな事業利益を増加(確保)に見せることができる。
色々理由は前向きな事を言えるが、大半の理由は人件費削減による目先のコストカットではないか。
上記日経記事の最後のまとめとして、以下のように記されている。
中途採用市場が広がり、年功ではなく実力主義の評価・賃金制度を持つ企業が増えれば、高齢者も60歳を超えて再雇用になって賃金が一律でカットされるといったことがなくなり、モチベーションの維持にもつながる。
この1文は間違っていないし、そうなって欲しいとも思うが、今行われている企業の高齢者リストラは、このような変化を求める未来意識あるものではなく、単なる目先の利益確保のための高齢者社員の首切りである。
実際問題、自分で再就職の活動をしながら、雇用市場の状況を見ると、多くの求人のある業種は介護・建設など、日本人の若者がやりたがらない辛い仕事だけだ。その領域の求人数が、全体の求人状況を良くみせている(求人が多いと見える)。
経験・スキル・キャリアを活かして、さらにステップアップのための再就職機会(中途採用市場)などが、中高齢サラリーマンにまで及ぶような社会変化が起きるとはとても思えない現状である。
早期退職を実施した企業においても、大半は、高齢層の社員を減らしてよかったね、で終わりであろう。本質的な人材確保・育成・成果主義・生産性主義への変革を危機感を持って進めている企業は知る限りではほとんどない(相当の地獄を見たNECぐらいか?)
今のままの企業制度・文化で、いくら高齢層をカットしても、それはその場しのぎのものであり、結局はまた同じ状況になっていくしかない。これが、企業にとって良くないことだと分かっているのに、なにもしない。これが日本の問題なのである。
吉本・ジャ〇〇ズに見る日本社会の究極的閉塞感とは
反吐が出そうだが、最近、巷をにぎわせている上記の問題も、同じだ。
日本の社会が変化せずに、悪い事だとわかっていても何も変わらない、変えようと声が上がらないまま、究極的な行き詰まり状況になってきている。
巨大な既得権者(芸能事務所)による支配、制裁、独占への見て見ぬふり
メディアの権力への忖度(忖度という言葉で文化的正当化する次元ではないが)
結局は、今回も、何も変わらずに、この異様な社会(エンタメビジネス)体制が、裏で延々と続けられていき、日本の国内でしか通用しない、子供相手の芸能・エンターテイメントから脱するチャンスを逃すのであろう。
タクシー業界もしかり。オリンピックで重要が高まるのがわかっているのに、制度を変えられない。タクシー業界の既得権保護のために何もできないのは、昔から多くの人が知っていることだろう。競争がないから、タクシー運転手の横暴さや乗車拒否などがずっと社会問題になる。運転手も利用者もハッピーではないのだ。唯一、何も行動しなくて済む役人と、利益を守れるタクシー会社経営者のみが、その恩恵を受けているだけだ。
宿泊業もしかり。既存のホテルや旅館保護という忖度か圧力か知らないが、形ばかりの民泊解禁で満足している。あんなものに、新規参入するのはリスク極まりない。インドから来るオヨホテルがどうなるか見ものだ。恐ろしい程の日本の既得権保護社会に太刀打ちできるのか。
企業も同じなのだ。
結局は残業時間が減り、残業手当のコストカットしか考えていない名ばかりの「働き方改革」や、
年功序列・一律採用・横並び給与・退職金による給料の後払いを続けて行ったのでは、結局は10年後には同じレベルの高齢者しか育たない。企業の中身は何も変わらず、また早期退職募集を繰り返し、振出しに戻る・・・だ。
表面的な高齢者増による人件費アップだけに目を向け早期退職制度でリストラしても、これまでのレガシーな硬直した人事・採用・育成制度や働き方価値観を変えない限り、その企業は何も変わらない。何も変わらない、変えられない企業が増え、日本社会は一層の閉塞感にさいなまれて行くしかないのである。
日本の社会を変える事ができる力を有する、マスメディア・政治家・行政・監督官庁、そして我々国民は、具体的に何をするべきであろうか?
中途採用市場を広げ本当の人材流動性を高めるには何を変える必要があるのか?どうしたらそう変えられるのか?
年功ではく実力主義、成果に応じた魅力ある賃金体制にどう変えていけるのか?
人生100年時代に向けて、高齢者・シニアの役目と機会をどう変えていくのか?年齢による一律定年制度をどう改めていくのか?
国民の多くがおかしいと思う旧来的な社会制度をどう変えていけるのか?これからの日本人がより楽しく、活力を持って生きていける世の中になるためには、今、本気で動かなければならないのではないだろうか。
今回の参議院選挙で、個人的な最大の興味はNHKから国民を守る党からの比例当選である。
NHKの存在や強制的料金徴収は、明らかに日本の社会問題だ(と思う人は多いはずだ)。そのピンポイントの問題に対して、変革を公約に掲げる政党が一定の支持を得たことは興味深い。
忖度や弱い者いじめしかしないメディア、素人集団の政治家、既得権者しか守らない官僚に頼れない今、このような既成制度による個々の社会問題にフォーカスした政党(組織)主導による社会変革は、日本で可能性のある手段なのかもしれない。既存政党に対して投票しない(50%を切る投票率)という結果が出た事とも合致する。まあ、そうなると、今度はそういう小政党が起こせないように規制してしまうのが日本なのだが(笑)
ちなみに、自分もNHKの横暴に抗議し、一切のテレビを廃却したので、N国党の潜在的支持者でもある。