フィリピン移住に向けて日本でこれからやる事(2)

前提条件として、1年間の半分以上をフィリピンで過ごす。必要な時だけ日本に戻ってきて、しばらく過ごす。そういう半移住生活をこれから送ろうと考える時に、いくつか決めなければいけないことがある。

加えて、半移住だけに関係することではないが、今年60歳になるにあたり、老齢厚生年金を前倒しで受け取る(受給開始年齢を繰り上げる)申請をするかどうか方針を決めておく必要もある。これは、移住する人、しない人に関わらず、60歳近くなったら考えておくべき話である。まずこの話から始めよう。

年金を65歳になる前に受給開始するかどうか?

今年自分は60歳となり、通常であれば65歳から受給するはずの老齢厚生年金を前倒しで60歳から受給する選択をすることもできるのである。この受給年齢の繰り上げについては、ネット上に多くの情報があるので参照して頂きたい。これから海外に半移住する自分の視点で、これをどう考えるかをここでは紹介しておきたい。

繰り上げ受給すると減額される

繰り上げ受給は、1ヵ月前倒しすると、現在だと0.5%受給額が減額される。12ヵ月だと6%, 5年だと30%だ。65歳から年間200万円の年金をもらえる人であれば、それを5年早く、60歳から受給すると、30%減額された140万円を年金として受け取ることになる。これは、65歳を超えても、死ぬまでこの額である。

なので、長生きすればするほど、損することになる。どこかに自分の損益分岐年齢が決まるので、計算するとよいかもしれない。大体は、80歳前に死ねば繰り上げ受給が得で、それ以上生きれば、65歳まで待って減額なしで受給した方が得という傾向になるはずだ。

繰り上げ受給を考える理由

さて、自分の場合だが、60歳からとは言わないが、来年以降のどこかで、繰り上げ受給を開始するかなと思っている。

フィリピンで暮らしたり、飛行機で往復したりと、確実に早死にするリスクは高くなる人生だ。もらえるものは、少しでも早くもらい始めた方が得だ。万が一、長生きしたら、それはそれで仕方ない。80歳過ぎたら、使うお金がそれほどなくても、あまり困らない気もする。どうせ、生きているだけになるだろうから。

ざっくりとした考えだが、これが一番大きな理由であり、日本で暮らし続ける人との大きな違いである。

2つ目の理由は、税金や保険料の支払いの問題だ。年金には、所得税も発生するし、年金額によって(その他の収入との合算ではあるが)払うべき住民税、国民健康保険料が大きく変わってくる。いわゆる、住民税非課税となる収入以下にしておくと、税金も健康保険料もすごく安くて済むのである。

その為に、繰り上げ受給であえて減額してもらい、節税するという方法もあるわけだ。

もちろん、公的年金以外に、企業年金やその他の収入がいっぱいある人は、あまり気にする必要はない。収入に応じた税金や保険料を是非たくさん収めて頂きたい。

年金211万円の壁

収入が年金だけであれば、一般的には211万円の壁などという言葉が有名で、年金収入が211万円以下であれば、住民税非課税世帯と認定され、払う税金や社会保険料の額が一気に下がると言われている。ただし、正確には、この211万円という数字は、人によって変わってくるので、細かい計算が必要になるのである。住んでいる自治体、家族構成などによって変化するのだ。

会社からの退職金は一括でもらえば分離課税なので、その後の社会保険料には影響しない。受け取り時に大きな税金は源泉徴収されるが、そこで完結する。一方で、企業年金のような形でもらう場合には、毎年の支給額に応じた所得税がとられ、さらに住民税や国民健康保険料も徴収される。企業年金に加えて厚生年金などの公的年金もあれば、その合算に対して課税、社会保険料が決まり、これが結構な金額なのである。

長年勤めあげて、さあゆっくり老後をと思いたいところだが、大事な年金からも税金や社会保険料はきっちり徴収され、その額はばかにならないのである。夢も希望もない・・・

65歳で年間240万円の厚生年金を受給できるとして、妻と17歳の子供1名を扶養し、妻は収入なしで40歳、年金以外の収入はなし、横浜市在住の場合で61歳から繰り上げ受給開始のケースで計算してみよう。

年金額は240万円から168万円に減額される。(30%減)

公的年金控除額は、1680000円 x 0.25 + 275000円 = 695000円となる。

基礎控除が所得税では48万円、住民税では43万円となる。

配偶者特別控除は所得税では38万円、住民税では33万円となる。

扶養控除が33万円

とすると、控除額総計は、1785000円となる。結果として課税対象となる所得はゼロだ。

このように、繰り上げ受給することによって、課税上の収入をほぼゼロに見せることが可能である。

来年は減額率が改善される?

最初に書いたように、これまでは、1ヵ月繰り上げると、0.5%減額される。こらが法改正で、来年から0.4%に改善されるということだ。

年金満額240万円の人は、5年繰り上げで、30%減の168万円だったものが、24%減の182.4万円になる。これでもまだ住民税非課税条件をクリアできれば、こちらの方が得だ。非課税の範囲の中では、めいっぱい多くもらいたいのだ。

 

住民登録を抹消するか?

海外移住するということで、日本の住民登録を消す(海外に転出)ことが可能である。日本に住んでいないという状態になる。

そのため、もちろん、住民税や社会保険を払う必要がなくなる。国民健康保険は、加入することができなくなるので、当然保険料も払わなくてよくなる。一番簡単に税金や社会保険の支出を最小限にできる方法である。住民登録上、海外へ転出の状態にすれば、前述のような壁の話は気にする必要がない。そもそも、住民税も国民健康保険も払う必要がなくなるからだ。

フィリピン人妻は永住権を持っているが、海外転出は可能で、永住権を失うことはない。海外転出後、半年以内なら何も特別な手続きなしに日本に再入国することが可能だ。半年以上帰らない場合には、事前に再入国許可申請の手続きをしておけばよい。住民票を転出しても、在留資格などにはまったく影響がないわけだ。

こう書くと、それじゃ住民登録は消した方が良いのではないかと思うかもしれないが、デメリットもある。

国民健康保険に加入できない

日本の最強の健康保険が利用できないので、日本滞在中に病院に行くとすべて自己負担になってしまう。もちろん、日本に帰国時にすぐに再加入することは可能なのだが、頻繁に日本と往復するような状況だと、住民登録と健康保険の再加入を毎回やるのもかなり面倒であるし、役所から文句を言われそうだ。海外にほとんど行きっぱなしで、特別な理由がなければ日本に戻らないような完全移住であれば問題ないが。

マイナンバーカードを返却しなければならない

これは番号自体がなくなるわけではなく、カードを返却しなければならないということだ。今後、マイナンバーカードがないと困ることが増えてくると(運転免許証との統合など)、大きな弊害になるかもしれない。海外転出すると、非居住者となり、銀行口座の新規開設などができなくなる。すでに開設済の口座が使えなくなることは実際にはなさそうだ。銀行の規約的に海外転出時には口座を閉めるようになっているようだが、閉めなくてもどうにかされるということはないようだ。

マイナンバーカードがないと、確定申告もオンラインではできなくなる。このあたりがかなり面倒だ(海外に移住しても、国内で家賃収入などがあれば、毎年確定申告しなければならない)。

住民票や印鑑証明がとれない

たとえば、不動産の売買などをするような場合に、印鑑証明が求められる。住民票の提出を求められるケースもいろいろある。しかし、これはまあ、大きな問題にはならないであろう。

 

結局どうするのか

自分の場合、上記の内容からすると、当面は、日本での収入を最小限に抑え(フィリピンでの収入確保の比重を高める)、住民税非課税状態にしておくことで、税金および国民健康保険料を最小限にしておく。住民登録は転出せずに残しておき、その最小化した保険料を払い続けて、国民健康保険、マイナンバーカードなどを維持継続する。

将来、フィリピン滞在時間が多くなれば、住民登録を抹消し、完全な海外居住状態に切り替える。

というのが、最適ではないかと現時点では判断している。

 

 

 

     
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