退職とは言わないのだな。引退かぁ。
自分の世代では、一番のヒーローは野茂選手だ。
野茂選手が日本人としては先駆けて、単身、大リーグに挑戦したちょうどその時、自分は米国シリコンバレーで働いていた。
野茂選手はサンフランシスコに来たので、機会があれば、日本人駐在員皆で応援に行ったのがとても懐かしい。
当時、海外駐在は初めての経験であり、なかなか苦労していた。仕事もそうだし、英語にも。
そういう中で、同じ異国の大リーグで活躍していた野茂選手は、自分にとって憧れであったし、どれだけ勇気づけられたことか。
大リーグ進出の先駆者であったことがすばらしい。その後、多くの日本人が大リーガーになったが、野茂選手のお陰で随分敷居が下がったのではないか。やはり最初の壁を超えることは、人一倍大変なのだ。
そして先日のイチロー選手の引退である。
あまりにもずっと長く大リーガーすぎて、それほど野球ファンではない自分にとっては、むしろ遠い存在ではあったが、その偉業については理解しているつもりだ。
自分の早期退職を参考にされたかもしれない。イチロー選手も50歳まで現役を続けると公言していたが、その前に、ある意味早期で、引退、退職の道を選んだ。自分のタイミングと偉大なるイチロー選手のタイミングが、がっつり重なったことは、偶然だろうか。断じて、偶然である。
その引退会見での言葉。
今回の引退について尋ねられたイチロー選手がこう言ったのだ。
「後悔などあろうはずがない」
同じ気持ちだ。
よく代弁してくれた。ありがとう。
月とスッポン以上のレベル差はあるにしても、こちらは35年のサラリーマン生活からの早期引退である。
65歳まで勤めようと公言していたが、57歳、35年でのサラリーマン選手生活に区切りをつけての、早期退職である。
家族を養い、子供を育てた。悪いことはしていない。海外生活の困難さにも耐え、一生懸命の瞬間を生きてきた。たかが数年、その引退が早まろうと、最後の最後の目標に到達できなかったとしても、この35年のサラリーマン生活に、
「後悔などあろうはずがない」
- 役員になってもっと長く今の仕事続けたかったなぁ
- 一度は自分の部屋に写真飾りたかったなぁ
- 一度は皆に反対されても出荷不可を宣言してみたかったなぁ
とかの後悔があろうはずがないではないか。