今回は、不動産投資物件 視察編である。
前回の記事で、田舎にある妻の実家に行き、父親の誕生パーティーを楽しんだことをご報告したが、その後、マニラ空港に戻り、友人宅を拠点に、いろいろマカティ周辺の物件をチェックしたのである。
移住用の戸建て住宅をチェックする
妻はどうしても綺麗で豪華な戸建て住宅を欲しがる。
何のために・・・ではなく、ただ欲しいのだ。
フィリピン人の家を買う、家を建てたい願望は相当に強く、外国で働くフィリピン女性の最終目標は家を建てる事であったりする。
コンドミニアム(区分所有マンション)よりも、戸建てが好きなのである。
ということで、まずは、郊外にある戸建て建売住宅を見ることにした。
現在では、都市部での不動産価格は相当に上がっており、フィリピン中流層では全く手がでない状況のようだ。それゆえ、都市部から車で30~60分程度の郊外に、大規模な戸建てのビレッジ開発が急速に進められており、開発・販売競争になっている。
ここ数年で、そのような物件価格も1.5倍、2倍に値上がりが続いているようだ。
今回チェックしたのは、上の地図のように、マカティから車で30分ほど南下した場所にある、Lancasterというビレッジだ。大きなデベロッパーが、町全体を開発している。住宅はもちろん、集会所、ショッピングモール、学校、公園、病院・・・そのビレッジですべてが賄えるような小都市開発だ。
街並みは非常に綺麗で、とてもフィリピンとは思えない。
もちろんそのビレッジを一歩出れば、いつもの貧困なフィリピンの街もすぐにあるのだが。
狙いは、フィリピン人で一定の収入を得るレベルのいわゆる中産階級以上のようだ。
例えば、
この写真のやつは、4ベッドルーム 110平米 駐車場ありで、約1000万円(物件価格)だ。販売している物件の中では、上位のものだ。
小さくて安いのもある。
こちらは、2棟がつながっている長屋タイプであるが、約400万円だ。
だいたい、広さやタイプによって、400万円~1000万円あたりの価格帯(物件価格)で販売されている。
ただ、この価格は、ベーシックな家の値段であり、この状態では、壁紙も照明もキッチンもなにも無いか基本的なものしか設置されていない。コンドミニアムもそうだが、実際には、この価格に、部屋をデザインする費用が必要になる。
豪華な内装にすれば、それだけ実質的な価格は上がる。また、注文時には、ベランダを拡張したりするマイナー変更も可能だ。そのような注文や内装デザインをモデルルームのようなレベルですると、さらに200万円、300万円は必要になる可能性がある。
デザインされた部屋はこのように、豪華なものになったりする(モデルルーム)
マカティや空港までは、マニラ湾沿いに高速道路がすでに建設されており、都市部へのアクセスは良い。ただし、ハイウェイ前後の部分ではとてつもない渋滞が発生している。実質的にはかなり時間がかかるであろう。
感覚的には、有楽町から30分圏内で100平米の一戸建てを1000万円ちょいで買えるというイメージだろう。日本に比べたらまだまだ安い感じがするが、それでももう何百万円台で買えるレベルではなくなってきている。
妻は、最初の4ベッドの1000万円のやつを非常に気にいっていたが、
- 今からすぐにここで引退生活するつもりなのか?ここで何して生きるのか?
- 投資的にも戸建ての賃貸は簡単ではないだろう
など、自分的には、とても買う気は起きなかった。
しかし、将来(10年後とかに)もし本当にフィリピンで老後生活を送るとしたら、このように静かで整然とした場所で暮らすのは悪くないし、その頃にこの戸建て住宅が幾らで買えるのか?想像もつかない。このまま順調に経済発展を続けていけば、おそらく、10年後には数千万円のレベルになっている可能性もあり、その時には買えなくなる。
問題は、フィリピンで借り手を探すのは並大抵ではないことだ。特にこのような高額戸建て物件では、とても借り手はつかないだろう。これを借りられる人は買える人だからだ。買えないけど、家賃なら払えるから戸建てにどうしても住みたい・・・という層がまだフィリピンにはいないのだ。
日本のように、賃貸住宅を仲介する業者が少ないことも問題だ。借り手は、基本的には自分で探すしかない。これはコンドミニアムでも同じだが、フィリピン不動産投資の最大の難関はここにある。
安く買って自分で住むならよいが、賃貸に出して家賃収入を得るインカムゲイン投資は、かなりリスクが大きいと言わざるを得ない。
今回も、都心部のコンドミニアムを夜見てみると、ほとんどの部屋の電気がついていない。恐らくは、誰も住んでいないのだ。外国人が投資として買って、値上がりするのを待っているのだろう。
完全なバブル状態であり、不動産価格がこのまま上がり続けるのかというキャピタルゲインリスクも合わせて考えると、やはり、これからフィリピン不動産に投資するのは、なかなかにリスキーではないかというのが、個人的な感想である。
今回宿泊した知人のコンドミニアムをチェックする
都心部をチェックする拠点にしたのは、知人の持っているコンドミニアムである。そこにホテル的に貸し出している部屋があり(民泊みたいな感じ)、そこを借りてもらった。
27平米の狭い部屋で、一応、ベッドルーム(ベッドでいっぱいになる広さ)と、小さいリビング+キッチンの2部屋構成ではある。まあ、仮の拠点には十分だ。今回は1泊 5000円程であった(ルームチャージ)。
場所は上の地図で右側で丸く囲っているGrace Residenceというコンドミニアムで、非常に空港から近い。
その為か、我々以外にも、多くのツーリストと思われる人が、頻繁に車で乗り付けていた。かなり民泊的に利用されているのではないだろうか。
都心部のコンドミニアムには、このように、各棟にロビー兼セキュリティゲートがある。
左手に荷物を運ぶストローラーが見えるように、ほとんどホテルと同じ状態だ。事前にオーナーが申請しておけば、フロントで名前を言うとキーが渡される。ホテルとマンションが融合している感じだ。
ここは恐らく空港から最も近い、ハイレベルなコンドミニアムのひとつではないだろうか。それは民泊的にはアドバンテージになるであろう。
このように敷地内に立派なプール施設が2つもある。
居住者は自由にいつでも利用可能だ。このほか、ジムも無料で利用できる。
何部屋か売りに出されていたので、チェックしてみたが、
31平米(角部屋) 1DKで約1000万円(税金、手数料などすべて含む総支払額)だ。前述の郊外の物件なら、4ベッドルームが買える値段だ。都心のコンドミニアムの価格が如何に上がってしまっているかだ。それでもまだ値上がりが続いている。
27平米(スタンダード)の1DKであれば、800万円(同上)程まで下がる。それでも800万円だ。
写真は31平米の角部屋物件の実物の写真だ。購入すると、このままの状態で引き渡しされる。素の状態のレベルが低いので、壁紙やカーペット、フローリングなどの追加作業をしないと住める感じにならないのだ。
また、フィリピンでの賃貸は、家具付きが普通のため、最低限の家具は自前で用意する必要があるのだ。
最低限のデザインや家具を入れて民泊や賃貸に出すためには、さらに50~100万円はかかりそうだ。そう考えると、とても簡単に回収できる投資にはなりそうもない。
仮に月極の賃貸の借り手を探すことができても、家賃は4-5万円ほどであろう。日本的に表面利回りを考えても、効率のよい投資物件とは言えない。横浜なら500万円で中古マンション買えば5万円の家賃で賃貸することが今は可能だ(ただし日本はこれからは家賃は下がる方向だろう。上がっていくフィリピンとは単純に優劣比較できない)。
民泊にしろ、賃貸にしろ、ワンストップで丸投げできる管理会社などはない。あっても相当の費用をとられてしまう。結局は、買っても、家賃収入での運用は難しいところだろう。下手なことをせずに、寝かせて、数年後のキャピタルゲイン(値上がり)を待つべきであろう。
中古のコンドミニアムってあるのだろうか?
中古で安く買えるならばその方が良い。
今回も会った何人かのエージェントに中古コンドミニアムについて聞いたが、売り物は無いという。
本当だろうか?誰も売らないはずはない・・・
これは個人的な想像であるが、
以前に新築時に買って、そのまま寝かせていたものは、完全に新築物件として売りに出している。
最悪は、ある程度使用したものでも、内装を一旦新築状態に戻して、新築物件として売りに出している。
ということなのではないだろうか。フィリピンはなんでもアリだし。
登記・登録の仕組みがちゃんとできていなければ、いくらでもごまかせるわけだし。
いずれにしても、今回も、中古物件というものに辿り着くことはできなかった。買う側としては、買った瞬間に中古価格になるよりは有難い話ではあるのだが。
BGC地区の物件はどうなのか?
今回は残念ながら、この地区の物件は見ていない。
地図では、上のコンドミニアムのちょっと上の方になる。空いていれば、10分もかからない。
この地区は、この数年で驚くほど開発が進んだ。あるフィリピンの財閥系デベロッパーが、徹底的に開発したからだ。マンション、オフィス、商業施設とか、もう、ものすごい。
横浜なんかとは比較にならない規模だ。ここがフィリピンか?とも思える。
ゼロから一気に開発したので、街並みは整然としているし、超近代的だ。建物も高層化されており、住居・職場・食が一体化されている。もちろん、ほとんどを外国資本が買っているのだろうが。いわゆるアジアの発展都市の典型であろう。
それゆえ、この発展も、先進外国の資本が引き上げてしまうと、一気にしぼんでしまう。景気の良い時に、自国の産業を持てるかどうかが大切なのだが、フィリピンはその点がちょっと弱い。製造業系は弱いし、コールセンター系のBPOサービスぐらいだろうか。観光業はこれからか。
とにかく、この地区はすでにコンドミニアムは飽和している感じだし、値段もとびきり高い。とても買える値段ではないので、今回は物件見学はパスしたのだ。数年前に買っておけば・・・そういう後悔だけが残る街だ。
ベイエリア地区の物件をチェックする
マニラ空港の北西すぐ近くに開発が進んでいるのが、ベイエリア地区だ。
ここは、マニラ湾に面した場所で、要は埋め立て地である。埋め立てた何もない場所に、これまたゼロから大都市を作っているわけだ。
この地区の目玉は、カジノリゾートであるということだ。またアジア最大ともいわれるショッピングモール、モールオブアジアなどがある。
右手に見えるのが、モールオフアジアだ。巨大すぎて何がなんだかわからない・・・
巨大なアリーナもこの地区にある。ミスユニバースだったかのイベントや、コンサートなども多くひらかれている。
こちらは日本人資本のカジノホテルであるOKADAだ。
とにかくすごい規模であり、日本ではまったく考えられない豪華さだ。
日本のパチンコメーカーで成功を収めた岡田和生氏がオーナーだ。2006年にこの土地を取得して開発を進めてきている。先見の明というのはこういう事を言うのだろうか。
OKADA以外にも、大規模なカジノホテルが建てられている。特に中国企業の進出がものすごい。
日本でもカジノ法案とか検討されているが、もうあのスピードではどうにもならないだろう。アジア各国はすでに大規模なカジノリゾートの運営を初めている。フィリピン、シンガポール・・・それでも制約ばかりの日本のカジノに来る人はいるのだろうか・・
この地区にあるのが、ショアレジデンスだ。
ベイエリア地区の一番北側、モールオブアジアの真ん前にあるのが、このショアレジデンスである。
いわゆる高層のタワーマンションである。
地図からもわかるように、空港からは非常に近い。先ほどのグレースレジデンスよりさらに近い。また、近々、地下鉄が空港から通るようだ(日本がODA的にやっているプロジェクトだ)。交通渋滞の激しいフィリピンでは、これは大きなアドバンテージになる。
実際のこの地区に行ったが、道幅は異様に広く、まだまだ空き地も多い。まさに開発途上という状態であった。マカティやBGC地区はすでに開発されきっており、ぎゅうぎゅう詰めだ。
前述のように、この地区には多くの中国人が流入している。カジノビジネスのためだ。その従業員のための居住獲得で、中国企業からいわゆる法人契約での賃貸需要が急増している状況とのことだ。
知り合いのエージェントも、中国企業から、必要な部屋リストをすでに預かっており、部屋を購入すればすぐに中国企業と契約できるとのことだ。1年契約であるが、需要があれば契約継続となる。家賃は10万円程度。ある意味、東京都心の家賃と変わらないレベルだ。
この地区での賃貸需要は、このように、ここで事業展開する外国企業従業員(または法人)ということになるのであろう。借り手がつけば、かなりの高額家賃を期待できる(先進国の家賃レベル)。カジノ事業はまだ拡大中であり(カジノホテルはこれ以上は増やさないという情報もある)、外国企業の流入が続けば、賃貸需要も継続されるのではないか。
ただし、このショアレジデンスの物件は、現時点では出待ちであり、すぐに買える物件はない。もちろん、超人気物件なのである。ちなみに、
27平米のスタンダート物件(1DK相当)で、1300万円(税金等込みの総支払額)だ。
とてつもなく高いが、まだすごい勢いで値上がりが続いている。投資したい人が沢山いるということであろう。
いくら人気でも、家賃収入だけ考えたら、とても効率は悪い。日本で1300万円で物件を買いまくったら、もっと家賃は稼げるだろう。しかし、やはりキャピタルゲインの魅力はフィリピン物件の方が大きい。日本で同じようなカジノ地区にマンションが建ったら一体いくらで買えるか、想像もできないだろう。5年後、10年後、この立地のコンドミニアムが一体いくらになっているか、リスクを取る価値はあるし、夢は持てるだろう。
フィリピン都市部 物件チェック 総評
今回の短期間ではあるが、現地訪問していくつか物件をチェックした結果の感想まとめである。
総じて、これから新たに日本人がフィリピン不動産投資を行うのは、あまりお勧めできない気がする。
敢えて言うのであれば、今後飛躍的な発展の可能性があるベイエリア地区への投資、レジデンス(居住用)ではなくオフィス物件への投資、郊外の一戸建て物件への投資・・・これらは一定のインカム・キャピタルゲインを得られるかもしれない。
結果的には、フィリピン都市部の恐ろしい程の発展状況に驚きを新たにした今回の訪問であったが、投資的には、なかなか厳しい状況との感触を得た。
以上はあくまでも客観的な評価である。
個人的な今後のフィリピン投資方針
フィリピンに生活の中心を移そうと考えている。まずは半分くらいはフィリピンで過ごすつもりだ。本格的には来年からになるだろうが。
個人的には投資効率以外にフィリピン推しのポイントがある。
- 妻の母国であり、親兄弟など、フィリピンで使える人間が多い。みなロクな仕事をしていないので、民泊清掃や借り手探しなど、得意の人間コネクションで安く貢献してもらえる。
- 街中でも英語で生活できる。ビジネスはもっと英語が標準だ。発展アジアの中でここまで英語で行ける国はなかなかないだろう。生活に困らないのは大変助かる。
- 規制が少なく、将来に希望が持てる。ルール・規制・既得権だらけの日本とは真逆。マクロには、これから発展する可能性を持っている。若い人口が多く、将来の消費増に大きく期待できる。
実際に生活していて、grab(uber的タクシー)もあっという間に普及して便利で仕方ない。民泊もどんどん進んでいる。新たなビジネスがどんどん拡大している事を実感できる。
完全な引退生活であれば、安全で静かな日本で暮らすのも良いが、それにはまだ早い。
後悔のないように、思い切って、フィリピンで投資および起業をすることに完全にシフトするのが現在の方針である。
具体的には、
- G20での米中協議再開後の上げで、日本株はすべて売却した。日本株からはすべて一旦撤退。
- 米国株も、すべて一旦同時期に売却した。こちらは暴落待ち状態で待機させる。
- 大半の株式投資資金は、フィリピン不動産・事業投資に振り向ける。待機中資金を合わせて、現有資産の半分はフィリピン投資に振り向ける。
- フィリピン滞在中は活動拠点に、日本に居る間は民泊として活用できる目途が立ったので、上記空港近くのグレースレジデンスの角部屋の買い付けを入れた。(キャッシュ一括払い)
- 中国人向けの法人契約を信じて、カジノ地区のショアレジデンスの購入を検討中(出物が出次第買い付け予定)。
- その他資金は、友人との共同出資での富裕層向け現地ビジネス起業に充てる。
60歳までの2年間は、このリスクを取って、大きく資産を増やせるかどうかに賭けてみたい。
ダメなら、60歳からは年金で静かにフィリピンで引退生活を送ることにしましょう。そのくらいの覚悟は必要だ。